マンションの近隣住民がうるさい。何デシベル以上なら取り締まってもらえるの?
こんな悩みを解決します。
なかなか解決しないマンションの生活騒音トラブル。
もし騒音の大きさが基準を超えていたなら、騒音を止めるよう強く主張できますよね。
では騒音の基準は何デシベルなのか?測定するにはどうすればよいのか?
この記事では、マンションの騒音基準や測定方法、騒音基準を超えたときに何ができるのか、について解説します。
マンションの騒音基準は法律では決められていない
現在の日本には、生活騒音を取り締まる法律はありません。
ただし、騒音に関連した法律として「環境基本法」があります。
環境基本法とは
「環境基本法」は、大気・水質・土壌などの環境を維持するための法律です。
騒音については地域ごとに環境基準が定められています(平成10年9月30日環告64)。
地域 基準値(昼間) 基準値(夜間) 療養施設 50デシベル以下 40デシベル以下 住宅地域 55デシベル以下 45デシベル以下 商業地域 60デシベル以下 50デシベル以下 騒音の環境基準(環境基本法) 昼間:午前6時から午後10時まで
騒音に係る環境基準について | 環境省
夜間:午後10時から翌日の午前6時
ただし環境基準は、道路・工場・飛行場・商業施設といった施設や企業が出す騒音が対象。
「マンションの上の住人が出す物音」といった生活騒音は規制できません。
つまり、日常生活の騒音は日本の法律では守ってくれないことになります。
裁判で使うのは「環境基本法の環境基準」
生活騒音に騒音基準はありませんが、マンション騒音の裁判では「環境基本法の環境基準」が採用されています。
最近の裁判事例では、「環境基本法の環境基準」を超えたかどうかで、受忍限度(我慢できる限界)かどうかが判断されました。
ということは、生活騒音も「環境基本法の環境基準」を事実上の基準と考えてよさそうです。
自治体の環境条例
一部の自治体では条例で騒音基準を定めています。
環境条例のある自治体では、環境基本法ではなく、条例が生活騒音の基準となります。
東京都:東京都環境確保条例
東京都では地域区分ごとに、昼間と夜間の騒音基準値が定められています。
東京都環境確保条例(都民の健康と安全を確保する環境に関する条例)
第百三十六条 何人も、第六十八条第一項、第八十条及び第百二十九条から前条までの規定に定めるもののほか、別表第十三に掲げる規制基準(規制基準を定めていないものについては、人の健康又は生活環境に障害を及ぼすおそれのない程度)を超えるばい煙、粉じん、有害ガス、汚水、騒音、振動又は悪臭の発生をさせてはならない。
都民の健康と安全を確保する環境に関する条例(環境確保条例)・施行規則|東京都環境局
地域 基準値(昼間) 基準値(夜間) 低層住宅地域 45デシベル以下 40デシベル以下 高層住宅地域 50デシベル以下 45デシベル以下 商業地域 60デシベル以下 55デシベル以下
※深夜早朝は
50デシベル以下別表第十三 日常生活等に適用する規制基準
環境基本法の基準より厳しめに設定されているものの、土地の敷地境界で計った時の音を規制する条例なのが問題。
つまり、マンション生活騒音は条例の対象外になっています。
東京都国分寺市:生活音等に係る隣人トラブルの防止及び調整に関する条例
国分寺市の「生活音等に係る隣人トラブルの防止及び調整に関する条例」は、東京都環境確保条例の基準に満たない音を規制する内容です。
ただし、基準値の規定はありません。
「生活音等に係る隣人トラブルの防止及び調整に関する条例」を12月1日から施行|国分寺市
奈良県平群町:平群町安全で安心な町づくりに関する条例
奈良の「騒音おばさん事件」があった平群町の条例です。
基準値は環境基本法より緩くなっています。
平群町安全で安心な町づくりに関する条例
平群町安全で安心な町づくりに関する条例
第6条 第2条第1号に規定する騒音の環境基準は、昼間(午前8時から午後8時まで)は65デシベル、夜間(午後8時から翌日の午前8時まで)は60デシベルを超えるものとする。
マンションの騒音を測定するには?
騒音が騒音基準を超えているかどうかは、音の大きさを騒音計で測定しなければなりません。
相手にクレームを言うときの証拠にもなるし、もちろん裁判での証拠としても必要です。
騒音の測定は、「騒音計」を使う方法と「騒音計アプリ」を使う方法の2種類あります。
騒音計
正確さを求めるなら、専用の騒音計を使うのが一番です。
裁判での証拠として使う場合、騒音の測定方法「JIS Z8731:2019」に対応したモデルを購入します。
天衡 デジタル騒音計 ARGM855
最初に紹介するのは、天衡のデジタル騒音計「ARGM855」。
1秒単位で自動記録し、ログデータをPCに保管できます。時系列の記録データは利用価値が高く、裁判で有効な証拠となります。
騒音が長時間続くときや、何度も繰り返されるとき、発生時間が不規則なときに便利です。
ただし、分解能が0.5秒なので、衝撃音のような短い音は正しく測定できません。
測定範囲 | 30~130dB(A特性) 35~130dB(C特性) |
---|---|
最小表示(分解能) | 0.1dB |
測定精度 | ±1.5dB(94dB、1KHzにて) |
周波数応答 | 31.5Hz~8.5KHz |
周波数特性 | A特性・C特性 |
測定レンジ | 30~80dB 50~100dB 60~110dB 80~130dB 30~130dB |
応答速度 | FAST/SLOW |
測定速度 | 2回/秒 |
保管・使用温湿度 | 温度:0~40℃ 湿度:10~80% |
電源 | 単3乾電池 4本 |
本体サイズ | 235×70×35mm |
製品質量 | 248g |
シンワ測定 デジタル騒音計 78588
日本の測定器メーカー「シンワ測定」の騒音計です。
最高値ホールド機能付なので、騒音が最大で何デシベルになったか、すぐに分かります。
10ミリ秒単位で計測できるので、ドンという衝撃音の測定に向いているのが特長です。
周波数特性はA特性とC特性に対応。
測定範囲 | 30dB~130dB |
---|---|
最小表示(分解能) | 0.1dB |
測定精度 | ±1.5dB(94dB、1KHzにて) |
周波数応答 | 31.5Hz~8KHz |
周波数特性 | A特性・C特性 |
測定レンジ | 30~70dB 60~100dB 90~130dB |
応答速度 | FAST/SLOW |
測定速度 | 100回/秒(液晶表示:0.5秒毎) |
保管・使用温湿度 | 温度:0~40℃ 湿度:10~75% |
電源 | 9V乾電池 1本 |
本体サイズ | 185×63×35mm |
製品質量 | 150g(電池含) |
サンコー 小型デジタル騒音計 RAMA11O08
サンコーの小型デジタル騒音計「RAMA11O08」は、簡易的に試したい人向けの騒音計です。
応答速度FASTには対応していないので、裁判での証拠としては使えません。
また測定間隔が0.5秒なので、衝撃音のような短い音は正しく測定できない制限があります。
測定範囲 | 30dB~130dB |
---|---|
最小表示(分解能) | 0.1dB |
測定精度 | ±1.5dB(94dB、1KHzにて) |
周波数応答 | 31.5Hz~8.5KHz |
周波数特性 | A特性 |
応答速度 | Impulse |
測定速度 | 2回/秒 |
保管・使用温湿度 | 温度:0~40℃ 湿度:10~80% |
電源 | 9V乾電池 1本 |
本体サイズ | 57×36×147mm |
製品質量 | 151g |
騒音計アプリ
スマホには騒音計アプリがありますが、あまり当てにできません。
アプリの問題ではなく、スマホのマイクの精度が低いからです。
そのため、騒音計アプリは裁判での証拠としては使えません。
ちゃんと証拠を取りたい、環境基準を超えているかを本気で調べたいなら、騒音計を買いましょう。
騒音基準を超えていた場合
騒音計で測定した結果、騒音レベルが環境基準を越えていたときは、以下の選択肢があります。
- 相手へクレームを言う
- 裁判を起こす
測定データを根拠にクレームを言う
測定データを根拠に、相手に堂々と生活騒音のクレームを言いましょう。
マンション管理会社を通じて伝えてもらう方法と、自分で手紙を書いて投函する方法があります。
騒音計で測定した結果は、客観的かつ具体的なデータです。
「足音がうるさい」と言うよりも、「夜12時に50dbの音がした」と言ったほうが断然、相手に説得力があります。
もちろん、騒音を止めてくれるかは相手次第ですが、まずは自分にできることをやりましょう。
測定データを根拠に裁判を起こす
相手に騒音を止めさせたり、損害賠償を請求する裁判を起こします。
裁判では「騒音の大きさ」や「相手の姿勢」などから、受忍限度を超えたかどうかが焦点になります。
ただ、裁判で注意しないといけないのは、騒音をJIS Z8731の規定通りに測定することです。
環境騒音の測定方法は「JIS Z8731亅に従うことと明確に決められている。
- 騒音計を三脚で固定する
- 騒音計の高さは1-1.5m
- ビデオカメラで測定の様子を撮影する
- 騒音が発生した時間帯を記録する
- 騒音計の調整をする
- 周波数特性はA特性、fast
これを守らないと、せっかくの測定結果が証拠として認められなくなるので注意。
騒音基準内だったとき
騒音レベルが環境基準内なら、裁判で止めさせたり損害賠償請求したりは無理です。
自衛するか引っ越しするか、どちらかになります。
気持ちを切り替えて行きましょう。
まとめ:正しく測定して問題解決へ
以上、マンションの騒音基準や測定方法について紹介しました。
騒音が環境基準を越えているかどうかは、JIS対応の騒音計で測定すればハッキリ分かります。
現状を正しく把握すれば、トラブルの解決に近づくはずです。